「焼き場に立つ少年」血にじむ唇 米写真家の被爆地記録

宮崎園子
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 原爆投下後の長崎で、亡くなった幼子を背負う「焼き場に立つ少年」。撮影した米国の従軍カメラマン、故ジョー・オダネルさんの妻が夫の生涯をたどり、長崎原爆の日の9日に著書が出版された。「投下した側」でありながら、投下は過ちと訴え続けた足跡を写真と共に追っている。

 オダネルさんは被爆後の広島、長崎などで、私用カメラを使って約300枚を撮影。フィルムは封印していたが、1989年に反核の思いが込められた彫刻像を見たのを機に、「核戦争を繰り返さないことにつながるなら」と写真展を開いた。原爆正当化論が根強い米国で批判に耐え、2007年、8月9日に85歳で亡くなるまで各地で写真展を開き、戦争反対を訴えた。

 本は「神様のファインダー 元米従軍カメラマンの遺産」。掲載されている被爆地の写真で、著名な「焼き場に立つ少年」について、幼子を火葬にする少年の様子をオダネルさんはこう記す。

 「炎を食い入るように見つめる少年の唇に血がにじんでいる」「少年があまりきつくかみ締めているため、血は流れることもなくただ少年の下唇に赤くにじんでいました」

 妻で米在住の坂井貴美子さん(56)が2年ほど前に出版社の打診を受け、オダネルさんの遺志を尊重して、応じた。坂井さんは取材に対し、「人間の存在の原点を、占領者としてではなく同じ人間としてカメラに収めている」と表現。そして核廃絶へのメッセージとして、こう語った。「ただ『忘れない』ということが大切と思う」。

 A5判192ページ。いのちのことば社(03・5341・6920)刊。(宮崎園子)

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