東日本大震災アーカイブ

「健康管理」里帰り出産 回復 県内 件数に地域的な差も

生まれたばかりの長女愛奈ちゃんを抱く宮崎さん

■福島市で長女を産んだ宮崎さん 「親元で良かった」

 原発事故の影響で一時、大幅に落ち込んだ県内への「里帰り出産」の件数が、原発事故前の水準に回復している。県産婦人科医会の最新の調査で分かった。

 県産婦人科医会は、出産を扱う県内の産科医療機関を対象に、県外などの居住地から県内の実家に戻って出産する「里帰り出産」の件数を3カ月ごとに調べている。昨年9月までの調査がまとまり、23機関から回答があった。

 昨年7月〜9月の3カ月間の里帰り出産件数は536件で、平成23年同期比で247件増、24年同期比で199件増となった。原発事故前の22年7月〜9月の件数は550件で、ほぼ事故前の水準に回復している。昨年7月は184件(22年7月・183件)、8月は176件(同8月・171件)で、原発事故前の件数を上回った。

 年間の月平均件数は、原発事故前の22年は176・1件だったが、原発事故が起きた23年は112・8件、24年は95・6件にまで落ち込んだ。25年は9月までの月平均が134・2件と、大幅に回復した。

 県産婦人科医会は、県内の放射線の現状について、正しい知識が定着してきた上に、時間の経過もあり、県内での出産に対する妊婦や家族の不安が薄らいできていると分析している。

 ただ、出産件数が戻り切れていない医療機関があり、回復状況に地域的な差があるとの見方もある。

 福島市の本田クリニック産科婦人科で2月22日に長女愛奈ちゃんを産んだ宮崎広美さん(34)は「親元で産めて良かった」と笑みを見せた。正月中に茨城県阿見町から福島市の実家に戻り、出産に備えた。家族と一緒に出産を迎えられて安心できたという。「県内が早く原発事故前の状態に戻ることを祈っている」と話した。

カテゴリー:震災から3年