東日本大震災アーカイブ

今を生きる 4日「都路灯まつり」 復興願い2年ぶり復活 古里へ思い重ねる1日に

「灯まつり」を前に竹筒の準備を急ぐ吉田さん

■実行委員長 吉田敏八さん 54
 東京電力福島第一原発事故で昨年度中止した「都路灯(ひ)まつり」が4日、2年ぶりに復活する。夜空の下で竹筒をともす田村市都路町の夏の風物詩。実行委員長の吉田敏八さん(54)ら関係者は地域の復興を願い、最終準備に励んでいる。
 灯まつりは町村合併前の平成15年、竹炭工芸業の「都美(みやび)」を営む吉田さんら旧都路村の住民有志が「都路の名を残すイベントを」と実行委員会を組織して始めた。アウトドア施設グリーンパーク都路の草原に竹筒1万本を並べ、ろうそくをともして天の川などを表現する。照明の少ない田舎ならではの幻想的な光景が人気を集め、初回に2000人だった来場者は22年の第8回には9000人に。県外から人を呼べる行事に成長した。
 しかし、東京電力福島第一原発事故が影を落とした。グリーンパーク都路は緊急時避難準備区域となり、指定解除後も除染が進まない。吉田さんは会社を休業し、まつりも中断を強いられた。
 吉田さんは妻、小学生の子ども3人と共に神戸市や山形県などを転々とし、妻子は今も岐阜県に避難している。帰還や事業再開が見通せない現状に迷いもあったが、「まつりを復活させ、住民の帰還を促したい」との声に押され、実施を決めた。
 会場は放射線量が比較的低い都路運動場に変更。竹筒に適した太い竹を調達していた双葉郡に立ち入れないため、今回は自宅の裏山から切り出した。元従業員らの協力も得て連日、準備を進めている。
 「住民の地域への愛着が結晶して生まれた」とまつりの意義を語る吉田さん。「帰還の判断など、人それぞれ悩みは尽きないが、都路への思いを重ねる1日にしたい」と願っている。
 4日は午後5時15分に点火式を行う。問い合わせは都路行政局内の事務局 電話0247(75)3550へ。

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